俳句大学のネット句会用のブログです。このネット句会への参加資格は、Facebook内で俳句大学に「いいね」を押して頂いた方や俳句大学投句欄のメンバーの方、あるいは実際に俳句大学の講義を受講された方、またFacebookはやってないけどこのネット句会を知り、俳句大学の趣旨に賛同にして頂いた方(俳句大学の趣旨はリンク先の「俳句大学」のHPをご覧くださいませ)となっております。あまり固いことを言うつもりはございませんが、俳句が好きだけど様々な事情で句会に参加しにくい方や、所属する結社以外の方と句会を楽しんでみたい方など、多くのみなさんとこの場で句会を楽しんでいけたらと思っております。前記の条件だけで基本的にどなたでも参加可能ですが、一応大学と名乗らせてもらっている以上、ある程度の俳句の知識、そして向上心をもって取り組んで頂けたら幸いです。私自身もこの場でみなさんと一緒に楽しませて頂きたいと思っております。また試行錯誤しながら運営をしていきますので至らない点があろうかと思いますが、なにぶんご理解の上ご協力頂ければ幸いです。みなさんよろしくお願いいたします。

第6回ネット句会 みなさんからの特選句へのコメントです!

第6回ネット句会の選句結果の点盛りに続きまして、今回は選句に少し重きをおいてみようということで、特選句を選んで頂き、その句にコメントをお願いさせていただきました。みなさんどう読まれその句を特選になさったのか、本来であればフェイストゥフェイスで楽しめればいいところですが、それが叶わぬが故のネット句会。皆さんからいただいたコメントをまとめてみましたのでご覧になって頂ければと思います。順不同にてお許しくださいませ。また、コメントのコピペ落ちやコメントそのものの落ちなどありましたら津野までご連絡くださいませ。

 

【清水憲一】
特選59番
秋日和の五階にある会議室、窓が少し開け放たれていて結構風も吹いていたのだろう。詠者は会議の途中でふと草の絮に目をやった、会議は時により眠気を誘うまた他のことを考えたりする。そこに草の絮が目に止まり、秋そのものを体感した一句になっている。何気ない日常の風景の中にさりげなく草の絮なる自然との対話を導入したのが良かった。


【高尾美紀】
特 108 秋の田を分けて鉄路の西東
近くにこのような光景が広がります。見渡す限りの秋の田。黄金色に輝いて、ほんとに好きな光景です。


【山野辺草民】
特選   149
自然薯は、慎重に掘り出さないと途中で折れたり傷つき価値が下がってしまいます。「宝の如く」というやや大げさな直喩がその様子と実感をうまく表現しており、立派な自然薯を大事に抱えている様子が目に浮かびます。


【亜仁子】
一番いいと思う特句は、63番の俳句ですね。この句の基底部の面白さ・目新しさは、「人魚の涙ネックレス」という言葉続きですね。人魚も悲しく泣いていて、人魚の涙がネックレスになるという写生がとてもよく効くと思います。何故、人魚は悲しいですか。この句の干渉部は、「流星や」ですね。「流星」というのは秋の季語であり、秋ですね。秋の季語の本意は、悲しい、寂しい、侘しいですね。秋になったので、人魚も悲しく泣き、涙がネックレスになります。こんな写生を見られる星流れもあることができるうと思います。この句の作者は、こんな写生の星流れを見て、この句を詠んだかもしれません。


【大久保俊克】
特選句
128 山寺の破れ障子や夜半の月
僧と月 対象が いいと思いました。


【谷原恵理子】
特選 144 秋神輿かつぐと決めてからの空
秋神輿をかつぐと決めて、毎日の天気が気になる作者。無情な激しい雨の時も、風の日も、作者の心に、ぴかぴかの秋晴れに、神輿をかつぐという希望が込められていることが伝わってきます。祭の良い句を詠みたいと願っている私ですが、作者のように神輿を担がなくては、このような句は、詠めないと脱帽しました。決めてからの措辞も秋空と響き合い、とても気持ちの良い秀句と思いました。


大関博美】
特選62  ひそひそと伝言ゲーム稲穂波
稲穂は熟して頭を垂れ始めている。爽やかな風が渡ると稲穂達がひそひそと伝言ゲームをしているようである。秋の麗らかな実り田をユーモラスに切り撮った一句である。


【高橋信治】
104 秋風や水面(みなも)の空の崩れゆく  特選
講評
秋風が水鏡を揺さぶり、映し出された空が崩れてゆく様が詠み込まれています。


【檜鼻鬼旬】
特選 151
コメント
稲光、不意をつく一瞬の光と大音響、時間が止まるかのように凍りつく経験は誰にしもあるところ。まさに「われや忘るる」瞬間を見事にスクープした臨場感溢れる句。リズムも語感も秀逸、素敵な句だと思います


【佐藤日田路】
特選 51
特選鑑賞
いまだブルキバッジを帯留めにされている方に会ったことはない。酔芙蓉は、艶のある女性のメタファーである。クラブのママさんだろうか。茶目っ気なのか、よほど思い入れのある品か、ひょっとするとおつきあいのゴルフ大会の記念かもしれない。帯とバッジのギャップに、夜の会話が弾むことであろう。


【遠音】
<特選>39 穭田の青見送りて火葬場へ
<コメント>
「穭田」という季語は知りませんでしたが、歳時記で引いて「ああ、あれか!」と光景が浮かびました。同じ刈り後から伸びる芽でも、春のひこばえと違い、秋の穭田には、その穂の若々しさとは裏腹に胸に込み上げるものがあります。きんいろに色づき、刈られ干されて、人の蔵へと収められてゆく幸福な稲たちとは一緒になれず取り残された未だ青い稲穂は、まるでかくれんぼで見つけてもらえなかった子どもがついに立ち上がってしまった姿のようでもあります。そんな季節外れの瑞々しい青を見やってから、死の斎場である火葬場へ向かいます。死者の肉体は既に灰となりつつあり、自分の肉体は生気を孕んでたしかにここに在るのに、まるで死者にうっかりと置いてゆかれたような心許なさ、ちぐはぐ感を抱えながら、生者はとぼとぼと歩んでいきます。


【宮野緒幌】
特選:135 ご夫婦でしょうか。秋の夜長は一人の情景を詠みがちですが、こんな風に二人で過ごす夜長もいいなと思いました。うらやましいです!


【牧内登志雄(祐)】
特選19
些細なことがきっかけの諍い。どちらかが次の声を掛ければ案外簡単に仲直りができるのに、お互いにそのきっかけが掴めずにいる。ふと、見上げれば澄み切った空で仲良く群れる鰯雲。無言の重さと、お互いに喉まで出かかっている「ねえ」という次の言葉との微妙な均衡が感じられました。


【菊池洋勝】
◎23の選評:残暑は真夏のそれと違い朝晩の温度差が身体に障ります。ので我が家では雨は勿論晴れていても風向きの変わる夕方には雨戸を入れて外を見る隙間はありません。毎年細やかですが夜のニュースで中継される月を見ながら母の拵えた建長汁を家族で食べます。自分のことに引き寄せて鑑賞することができました。


【山中みきを】
特選
3とんばうのつるみて日暮れさそひけり
秋の夕暮れですねえ。何となくさみしさ漂う中に赤とんぼの群れが・・。そして連なったのがそこかしこに。自分はこれからどこへ行くんだろう。何をするんだろう。


【渡辺すすむ】
133 千枚の棚田に千の藁ぼつち 特選
もう30数年前に能登半島を旅した時に見た、秋の刈り取りを終えた棚田の風景が鮮やかに甦りました!。千枚と数を限定したことで、広大な棚田と円筒形に積み上げた藁塚の、微笑ましい風景を見事に詠み込んだ佳い句だと思いました。


【北野和良】
(特選) 62
秋の田で実った稲穂が頭を垂れて一斉に風に揺れている。伝言ゲームをしていて、他の人に聞かれないようにひそひそと小声で伝えている様子が稲穂の揺れる姿と重なってとてもユーモラスに感じられます。


【野島正則】
93 秋うらら心の地図の一人旅
ガイドブックなど入らない。心の中に目的地はある。当てが無いのではなく、心の中の赴くままに行くのだろう


【瓦すずめ】
特選144
コメント
秋神輿を担ぐと決めた主人公が見上げる空。秋ですから、きっと澄んでいるように思います。澄んだ空は決意するまでと違ったように見える。では、どんな風に違って見えるのでしょう? さわやか? ひたすら美しい? でも、吸い込まれそうでちょっと不安? 想像力が刺激されました。


【西村楊子】
45について
理性というドキッとする言葉を俳句に使うことが新鮮。十六夜になっても理性を失わなかった自分に対する寂しさと読んだ


【熊谷房子】
特選41母国語を誰が父叫ぶ運動会
思わず母国語が出てしまった、父の慈愛が感じられる句として頂きました。有りそうで無い俳句ですね


【恩田富太】
138 あぶな絵の広げてありぬ捨扇
扇に描かれたあぶな絵が、文字通り「あけっぴろげ」にされていますが、捨扇の季語にある侘しさを下地にすると、過ぎた夏の昂ぶりが、いよいよ覚めたことを伝えます。広げられた扇からは、夏を懐かしんだというよりも、持ち主の奔放を想像させられます。詠み手はその捨扇を発見して、嘆息したのではないでしょうか。


【茂木ひさを】
特選:56 父探すちちろの方におるかもと
夕食の時間でしょうか、お父様が見当たらない。虫の声に惹かれて、聞きに行っているのではないかと探しに行ったという句。とても風情のある家族の暮らしが見えてくる句だと思います。或いはお父様は少し認知症が始まった方かも知れません。そう読むと更にお父様への愛情が感じられる句に思えます。


【小島寿々】
特選・135
夜長も楽しくなりそうです。


【井伊辰也】
特選 52 稲雀追へば背から稲雀

稲を大事に育てている様子が、面白可笑しく伝わってきます。雀もまるまると太っていることでしょう。読んで幸せな気分になる御句です。


【山岸八萬星】
特選は119。
運動会の子供も頑張るけど、そのお母さんも負けじと重箱の中身を頑張っているという微笑ましさ。さらにそれを運動会とみなす滑稽さ。まさに俳句の俳。


【桑本栄太郎】
60)きちきちの後追ふて行く広野かな
今の時季、まだみどりいろの残っている畦道などを散策すれば、突然足もとから飛蝗が飛び立ちます。子供の頃、思わず追いかけて捕まえたものです。広野かなとの下五の切れの措辞に、爽やかな秋の広大な野原を想起させ、心地良い秋の真最中です。


【目黒航】
特選56
今回の句会は、季語が相当重なった。ある意味、小生も同じだが、手垢のついた句が多かった気がする。その中で、他に詠んでない季語の句を選んだ。ちろろもある程度詠まれているが、この句会では唯一。介護の問題、親子の問題というのは、文明が発達しても解決しえない。小生も親が心配になるとしを、むかえつつある。子というのは、母がなくては生きられないものだ。しかし、父も厳然として必要なものでもある。自分とラップさせてしまったが、いい句だと思う。


【村上ヤチ代】
特選・67
散骨と鳳仙花の取り合わせがお上手と思いました。


【十河智】
特選 122 残る蚊の打つまでもなく吹いてみる
たとえ腕に止まっていたとしても吸う力も無いであろう、滅び行くものへの余裕と憐憫の情が面白く感じられた。


【津野利行】
特選:38 ファインダー覗く片目や秋深し
カメラのファインダーを覗くとき、カメラ入門書などを見ると「両目を開けて・・・」なんて書いてあることがありました。でも実際には覗き込んだ片目の方に集中してしまいますよね。いまどきのデジカメだと大きな画面を見ながらというのも多くなりましたが、やはりカメラはファインダーを覗き込んでこそ出来上りの写真に近い風景を捉えられるもの。ぐっと被写体にせまる目も心も秋の深さをしっかりと捉えている、作者のものを捉える時の感覚の素晴らしさを感じました。

 

 

いかがでしたでしょうか、私自身もみなさんの読み、コメント、大変勉強になりましたし、楽しかったです。なるほどな~そう読むのか~と、採らなかった句がえらいよく見えてくるのがまた俳句、句会のいいところでもあろうかと思います。そのほか特選句のほかにもコメント頂いた方もいらっしゃいましたが、宜しければ各自ブログを参照して頂ければ幸いです。ありがとうございました。

 

俳句大学ネット句会担当/津野利行

【管理人:元 俳句大会通信教育学部ネット句会科/津野 利行】