俳句大学のネット句会用のブログです。このネット句会への参加資格は、Facebook内で俳句大学に「いいね」を押して頂いた方や俳句大学投句欄のメンバーの方、あるいは実際に俳句大学の講義を受講された方、またFacebookはやってないけどこのネット句会を知り、俳句大学の趣旨に賛同にして頂いた方(俳句大学の趣旨はリンク先の「俳句大学」のHPをご覧くださいませ)となっております。あまり固いことを言うつもりはございませんが、俳句が好きだけど様々な事情で句会に参加しにくい方や、所属する結社以外の方と句会を楽しんでみたい方など、多くのみなさんとこの場で句会を楽しんでいけたらと思っております。前記の条件だけで基本的にどなたでも参加可能ですが、一応大学と名乗らせてもらっている以上、ある程度の俳句の知識、そして向上心をもって取り組んで頂けたら幸いです。私自身もこの場でみなさんと一緒に楽しませて頂きたいと思っております。また試行錯誤しながら運営をしていきますので至らない点があろうかと思いますが、なにぶんご理解の上ご協力頂ければ幸いです。みなさんよろしくお願いいたします。

第8回ネット句会 選句お願いします!

俳句大学の第8回ネット句会に、多数のご参加いただきありがとうございます。

 

まずは投句した自分の句があるかどうか、そして句が間違ってないかチェックしてみてください。間違いなどがあったら下記の選句受付開始時間までに津野まで連絡下さい。
選句は投句と同様に、ブログのコメント欄に記入頂く、またはFacebookの津野へ直接メール頂くの方法で、他人にわからないようにお願いいたします。

 

選句期間:平成27年11月21日(土)午後10時日平成27年11月25日(水)午後11時30分

 

参加者は下記の41名(津野入力順・敬称略にて)です。
佐藤日田路、亜仁子、山岸八萬星、瓦すずめ、大久保俊克、十河智、手塚偉智朗、歌代美遥、山中みきを、坂上雲、西村楊子、関野義高、津野利行、桑本栄太郎、清水憲一、呆菜、髙橋雅城、村上ヤチ代、小酒井あゆみ、大関博美、遠音、加納裕、北野和良、剣持政幸、渡辺すすむ、山野辺草民、川岡末好、檜鼻鬼旬、高尾美紀、菊池洋勝、谷原恵理子、濱田美紀子、五島高資、井伊辰也、茂木ひさを、俣江美智子、村上真々、野島正則、碩真由美、牧内登志雄、山田紗由美、

 

選句方法:選句は番号でお知らせください。
五句選で、うち一句特選を選び、特選句の選句理由や感想などのコメントを添えてください

 

 

句は作者を伏せてテーマごとにランダムに並べてあります。

夕映の凍湖や少女舞上がる
2 石ひとつ十色を感じ冬紅葉
3 東京と江戸をむすぶや冬の水
4 凩の行き着くところ佃島
5 「たきぎたきぎ」「『ぎ』とちゃう『び』や『び』焚き火やで」
6 夜半の雨洗いざらしの烏瓜
7 放課後のチャイム早めて冬に入る
8 鍋になる猪の眼に射貫かれり
9 ポン菓子のポンを遠くに冬うらら
10 シリウスや自分の胸を抱きしめる
11 冬の虹帰郷の知らせ投函す
12 噫葷酒山門に入るクリスマス
13 針の無い柱時計や冬安吾
14 霜焼けの草の匂ひのひとりごと
15 冬紅葉酸いも甘いも噛み分けて
16 今日だけは父と母とし七五三
17 猫くんのしつけ始める冬初め
18 緋色冴ゆ十一月の寺の鯉
19 天地のあわいに生まる夕時雨
20 寒の月火傷の肌をさらしけり
21 東京の優しさ同居冬景色
22 暖かき部屋に入り出づ水洟や
23 塩水を沸かして渋柿をくぐる
24 木の間より鳥のかしまし初時雨
25 冬ぬくし電波時計のグルリとす
26 焼き鳥のしみる煙や冬の暮
27 ふくよかな母の背に似て山眠る
28 凡人の凡そなる日々日記果つ
29 お太鼓をポンと叩ひて冬に入る
30 時雨来て小脇に隠す仏蘭西パン
31 あおぞらに峰の白きや片しぐれ
32 狐火やどの道ゆくも戻りたり
33 庭紅葉水子地蔵のかくれんぼ
34 敷松葉施し景色明りけり
35 火恋し尿瓶を割つてくれさうな
36 落葉踏むこの世のことを考えず
37 山頂の神社を越えて小春かな
38 冬天にぽつりと柿の熟るる頃
39 鴨みんな強き風へと顔向けて
40 柿の秋短冊にある月並句
41 設へは詫び助一輪茶事の席
42 腕時計はめる手首に今朝の冬
43 誰を待つホームに飾る吊し柿
44 冬の鴨信じることの安らかに
45 裏山の雪降り止まぬ見舞かな
46 熱燗や針の言葉を併せ飲む
47 露凍るや狸書きたる木葉経
48 着ぶくれて己が腕を探すなり
49 縄文の火祭り跡の小六月
50 寄せ鍋やモモにはなれぬトリのムネ
51 冬浅し駅員だけの始発駅
52 障子閉むなべて物事紙一重
53 あちこちにイルミネーション冬来る
54 裸木となりて激しき絡み合ふ
55 わたなかのムー大陸や天狼星
56 遺されし大きセーターに包まるる
57 モクセイの記憶に触れる海馬かな
58 凍てつきし星の欠片を拾ひけり
59 木守柿だけの出迎へ郷の駅
60 白無垢のごとく雪積み姫椿
61 山の夜の冬の嵐の中の恋
62 一燈を余喘に凝らす霜夜かな
63 虫喰ひて一幅となり柿落葉
64 瞑想に耽けるライオン冬麗
65 梟の後ろ姿を誰も見ぬ
66 さざんかのひとひらといふかぞへかた
67 忘れ花校舎の裏の秘密基地
68 履き物屋高野金剛峯寺の秋
69 冬の月のみ熱源の猫のゐて
70 冬波の愛かと想ふテトラポット
71 木枯や庭に枝場の吹き溜まり
72 点々と水面に揺るる散紅葉
73 尖りたる冬の月見て聞くニュース
74 残り鷺風を抱くやうに舞い降りる
75 茶の花や老婆もんぺの庭の畑
76 炉話の佳境に爆ぜる土佐の炭
77 焼酎に漬けた渋柿甘くなり
78 椅子ふたつテラスにならぶ小春空
79 底冷えに足裏にぎる六畳間
80 十一月営業マンと話し込む
81 山茶花野降り積もる陽の純白に
82 青空や綿虫白く光り舞ふ
83 朝市の大根砲のごと担ぐ
84 今生に生きた証しの木の葉髪
85 マネキンの笑みは変はらず初時雨
86 大根の引き抜くままの泥臭さ
87 体内のチューニング音冬に入る
88 たれたれのみたらし団子冬ぬくし
89 東京の灯り消したき冬の星
90 波のまま風のままなる浮寝鴨
91 健診の名医の見立て小六月
92 地下街のうちの一灯冬の蜂
93 父の剥く渋柿皮の厚いこと
94 ナイフ研ぐ指切るまで研ぐ寒暮かな
95 小春日や時々泣いてノーテンキ
96 寒月やぽきんぽきりと飴細工
97 目を開けていても暗闇冬の浜
98 せせらぎの早瀬さばしり紅葉散る
99 雪蛍一緒に泣いて呉れますか
100 餌をねだる鯉に詫びけり紅葉観る
101 身の内の芯熱りをり冬紅葉
102 梟から抉る地球儀月球儀
103 虎落笛かように痛む訳は何
104 お日さまに挨拶したく蔦紅葉
105 さわさわと下枝に揺るる寒椿
106 惚れ惚れの映える山茶花いつも晴れ
107 秋深し横にせしものやや動く
108 自力まだあると気付きし神無月
109 七つ目の駅より仰ぐ冬の雲
110 グレーテルの消えしパン屑寒雀
111 雪吊りの水面に写り臥龍
112 冬ぬくし路地の奥までチンドン屋
113 手水鉢冬の紅葉の二つ三つ
114 寒昴沈む波間やバビロニア
115 雪祭先住民の輪が跳ねる
116 夜明け前無情に足蹴る湯婆かな
117 哲学堂朱し山茶花梅雨に濡れ
118 張り詰めてやさしきひかり白障子
119 振り上げる白杖から伸ぶ冬の影
120 蓮枯れて自白を迫る静寂かな
121 山茶花や散る花びらの様々に
122 自然薯掘り風は爽けく鳶の舞う
123 家の前怪我の手術に鎌鼬
124 百円で何でも買へる冬籠
125 冬ざれやサイレンなしの救急車
126 空爆の報道ばかりの冬来る
127 一茶忌や凜くん野鳥となりて翔べ
128 跪く原爆ドーム時雨ける
129 一体は落葉頭に五百羅漢
130 ココットの壺真っ赤なり感謝祭
131 七竈信濃の国を歌ふ人
132 弾かれし竜の玉かな一夜妻
133 冬めくやなほ碧き島喜界島
134 オーロラの満ち満ちてゆく霧氷林
135 空けるごとつがれる燗の酒見つむ
136 雑踏が風避けになる晦日かな
137 枯井戸を詩情で満たす日向ぼこ
138 時雨れ夜は薩摩結びを子に教へ
139 どうしても座りの悪き林檎かな
140 建付の悪い裏木戸秋深し
141 暗き森銀杏の落ち葉光りけり
142 ガーデンの植えの雰囲気小春かな
143 ゆらゆらと波間に揺るる浮寝鳥
144 自動車のホーンと競ふ火の用心
145 タコの串一本多いおでん鍋
146 咳九十焼夷弾百有る話
147 紅葉降る熊本大の赤レンガ
148 バルザツク像に叶はず褞袍着る
149 霜野原片っぽだけの赤き靴
150 クリスマス迷いを隠す紅をひく
151 少年の黒子艶めく憂国忌
152 木上より地上にぎはす枯葉かな
153 冬麗の朝水色のランドセル
154 凩やそれぞれの灯へ急ぎたる
155 あきらめてからの自由や冬銀河
156 裸木と認めぬ落ちぬ葉一枚
157 冬ざるる倒れしままの一輪車
158 凩や哲学の道前かがみ
159 抓みみる鬼のむくろか枯芙蓉
160 冬の田に生る風船のピンク色
161 小春日の下校の子らの足遅し
162 高野山一なる紅葉とふ宿坊
163 小春日や大地てふ名の直売所
164 絆創膏浮きし五分刈り火の用心
165 時雨るるや嘘泣きと言ふ技覚ゆ
166 東京のど真ん中にて時雨けり
167 虎落笛俺はそこまで弱さうか
168 冬の蝶グツドバイする恋地獄
169 店先に蜜柑並びて荒物屋
170 冬空の落ち葉踏む人なかりけり
171 妹と忌日の夜や柿膾
172 落葉掻き寂しき音があるばかり
173 渋柿を干すには足りぬ身丈かな
174 牡蠣筏巡りしフェリー厳島
175 忽ちにかむゐね雪の積もりけり
176 板塀の母屋の二階柿すだれ
177 富士山の景色を包む時雨かな
178 山間の霧の向こうに鳶の声
179 一点明星寒立の朝に残りをり
180 指切りの契りの疼く近松
181 咳きの勢ひで押す核ボタン
182 空気入れまたもや借りる冬浅し
183 谺して列車過ぎ行く冬銀河
184 御手杵の槍ふわふわの綿帽子
185 時雨るるや方言の交ふ街にをり
186 昼の月白き天守と競い合う
187 童心の銀杏落葉に大人たち
188 木枯らしや魔王が夜の手を伸ばす
189 冬枯れやいささかつのる人嫌ひ
190 秋過ぎて冬支度する扇風機
191 鈴なりの柿明かりかな遠回り
192 大粒の鹿沼土軽き冬うらら
193 難問の解けてすつとおでん酒
194 冬銀河うからやからの音すなり
195 少し羨(とも)し真砂女の恋路夕時雨
196 百歳の手を大根に引かれをり
197 引力も神も見へざり木の実降る
198 鯛焼と姑の口のヘの字かな
199 ハンガーの首の直らぬ冬の朝
200 家鳴りせり冬将軍の斥候か
201 紅葉時宮の名付けし臨紅庭
202 わが息の障子の紙と和みけり
203 ぬばたまの黒髪濡れし冬隣
204 枯蔓の手放せぬものありにけり
205 寒北斗後ろに誰もいなくても
(以上)

第8回ネット句会 開催いたします!

俳句大学がお届けする第8回ネット句会。今回も日ごろお目にかかれないみなさんと、この場を通じて句会を楽しみたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

 

 

『俳句大学・第8回ネット句会』

 


【兼題】
当季雑詠五句出し五句選
※五句出して、五句選をしてください。

ちなみに、今回、講師の先生方にも句会への参加をお願いしております。
何名かは参加してくれるかもよん、お楽しみに♪

 

【投句締切】
平成27年11月19日(木)午後11時00分

 


【投句方法】
1.なるべく、このページの『コメントを書く』欄へ記入にて投句願います。投句受付時のコメント欄は非公開になっているので、管理者のみ閲覧できるように設定してあります(句会終了時に一斉公開とさせて頂きます)。
2.ブログコメント欄への投句が困難な方に限り、Faebookの津野利行宛にメッセージにて投句してください(私と友達登録をしていなくてもメッセージを受け取れるようになっております)。

 


【注意事項】
1.投句は五句出してください。また選句も五句選にてお願いいたします。
2.投句は一度にまとめてしてくださるようにお願いします。ばらばら送られるとミスの元ですのでご理解くださいませ。また、一度投句して頂いた句の訂正、取り下げはできません。前述六句以上投句の順位変更もNGとさせて頂きます。
3.投句頂いた句はネット上に公開されてしまうので、応募作にしたい句などの投句にはご注意ください。
4.投句の際には必ず名前を書き添えてください。俳号でも本名でも構いませんが名前をフルネームで書き添えてください。「永田満徳」、「五島高資」など下記のように『最後に一度だけ』書き添えてください。全句の後に記名頂かなくて結構です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
《投句例》
まだ奥に部屋ありそうな水羊羹
星の夜や井戸は海へとつづきけり
夕立にならんで公務員である
五島高資
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.その他ご質問は津野までよろしくお願いいたします。

 

ネット句会担当:津野利行

第7回ネット句会 みなさんからの特選句へのコメントです!

第7回ネット句会、みなさんの特選句へのコメントをアップさせていただきます。順不同にてお許しを、また、コメントのコピペ落ちやコメントそのものの落ち、または選者の間違いなどありましたら津野までご連絡くださいませ。

 


【瓦すずめ】
特選174 燈火親し父に丁稚の時有りて◎
秋の夜長に燈火の下で、お父様の過去をアルバムでみるなり、あるいはお父様自身から話に聞くなりしているのでしょう。丁稚の時と書くことで、お父様の年や子の句に読まれている時代がなんとなくわかります。また、お父様への興味が湧き、想像力を働かせることもできます。はっきりとは書いていない、にもかかわらず、想像を膨らませることのできる、素敵な句だと思いました。


【小島寿々】
特選・166
まるでアンリルソーの絵画を見ているようです。素朴なお父さんがあたたかく無骨でなんともなつかしい。


【西村楊子】
特選193の感想。
ときどき庭の手入れをしに来る父がいるのだろか。そこにいるだけで庭の風景と同化する父。それを見ている眼差しがやさしい。菊日和よりゆるやかな萩日和がいい。今日は盛りの萩もバイプレイヤー。


【桑本栄太郎】
159)父といふ肩巾ありし秋祭
子供にとって自身が何歳になろうとも父の想い出とは、大きくて頼もしい父親の肩巾であろう。後ろ姿の肩を見て育ち、時には背負って貰った大きな肩巾を決して忘れる事はありません。秋祭に負ぶって貰った肩、先を行く父の肩を目印に見物しながら付いて回った懐かしさである。


【加納裕】
特選は47 一度だけただ一度だけ林檎噛むといたしました。
以下に鑑賞文を記します。
林檎は禁断の果実である。貞操観念のメタファーであり、善悪を識る果実である。イブは蛇にそそのかされ、神に禁じられていたこの実を食べ、かつアダムに分け与え共犯関係となる。結果無垢は永遠に喪失し追放されるのだ。この禁断の実を噛むことを覚悟したこの詠者は女性であろう。覚悟を決めたおんなの旋律は美しい。この句にはスペースがある。音楽でいう休符だ。ここを鳴らし切れれば名曲となり得る秀句である。また特徴的な上五から中七へのリフレイン。平板ではなく、結びに向かい抑揚を感じる。この静かなダイナミクスこそがこの句をして特選せしめるものである。


【大久保俊克】
158 喜びが伝わる


【井伊辰也】
特選:116 星合の空に行き交う夜行便
古代と現代の恋愛事情の対比であり、また、ロマンティックとリアルという対比でもあり面白い。


【濱田美紀子】
特選 59 「かたりと」にやられました。終わりゆく秋が,かたりと静かな幸せのいたずらをして去って行くような。小さなきっかけから思いが伝わり,始まるようなうな予感が好きです。


【関野義高】
特選句 17
選評:人体の大半は水から成ります。ですから、秋日が濃くなっていくのは恋占いをする詠み手の体内も同じなのです。冷静に占いながらも身体は熱を帯びてゆき、心も動き始める。そんな光景がこの句から感じられます。


【山岸八萬星】
特選は 144。
宇宙にもやはり百物語で幽霊は出てくるのか? また、ずっと宇宙でひとりぼっちの身からしたら、幽霊でもいいから誰か出てきてほしいのかもしれません。


【亜仁子】
一番いい一句として、34番の俳句をお選びしました。
この句の基底部は、「ひと駅を歩く別れや」です。人々は駅を歩いて、旅行のせいで、別れなければなりません。恋人は仕事のために旅行をしてしまって、寂しくて、悲しくなります。干渉部は、「秋しぐれ」であり、この俳句の季語ですね。時雨は、秋の終わって、冬が始まる頃に降っている雨であり、地球温暖化のせいで、最近はなかなか降っていません。この俳句を読みながら、芭蕉の「草枕犬も時雨るる夜の声」という俳句を思い出しました。芭蕉も、旅行をしながら寂しくて、時雨の音を聞いて、淋しさが募りました。時雨の音が身にしみるんですね。ですから、34番の俳句にも、「秋しぐれ」という季語がよく働くと思っております。


【清水憲一】
特選199番
この句は、詠者の少年時代の想い出だろう。昔の親父は普段は無口だが、何かこちらが世間様に恥じるような行為をすると本気になって叱って呉れた。つまりげんこつが飛んできた。そのような今風の優しい父親に比べると無骨な振る舞いの昔の親父が、どこかごつごつした榠櫨の実と響き合っている。私も亡き父から鉄拳を喰らった者として共感の一句であった。


【渡辺すすむ】
特選は「54」です。
今回は甲乙つけがたい佳い句ばかりで選句に大変迷いました。そんな中で季語の「後の月」を詠まれた御句に大人の恋の魅力を感じました。「愛されかたも忘れたわ」の言葉に過去の出来事が凝縮されて、俳味のある素敵な佳い句に仕上がりました。きっと沢山の恋愛経験をお持ちの方ではないでしょうか!?。また、惜しい句に7の「釣瓶落とし」が「鶴瓶落とし」と記載されていたのがなんとも残念でした。もし「釣瓶落とし」だったら特選に選んでいたかもしれません。


【山中みきを】
特選 133
う~ん、そうかも知れぬ。科学なんてどうでも良い、この星空があれば。


【恩田富太】
<特選>100 もう会はぬ人のまなざし天の川
まず、会えぬのではなく、会わぬという決意があり、それでも面影を求めずにはいられない。銀河を見上げる姿に面影を求めたところに、隔たりの大きさが表れるようで、胸が詰まります。この句の印象がさらに強まったのは、もう会わぬことに、SF的な隔たりまで空想させられたからでした。


【小酒井あゆみ】
特選 196 幻月や吾もまた一人の父であり
幻月とは、本当の月ではなく暈のような現象の月だと思う。作者は自分が父であるということを幻のように、また父には相応しくないと思っているのだろうか…母と違い父は自分が産むわけではなく信じるしかない存在でもある。考えさせられるし、そこはかとない哀しみを感じる句である。


【檜鼻鬼旬】
特選 160 手袋の父の形に残りをり
「作者の父親に対する尊敬、慈しみ、愛情の念を深く感じました。こういった気持ちを、言葉にして父に伝えることは、気恥ずかしさもあり、なかなかできないものです。素直に共感するところの多い句でした。」  よろしくお願いいたします。


大関博美】
特選 30「この街に恋得し日々や酔芙蓉」
学生時代から過ごした街で恋をし、そして酔芙蓉の花が色を変えるように過ごした日々を振り返っている作者。恋の行く末がどうなったのか、いろいろ想像してしまいます。さわやかな御句です。


【熊谷房子】
特選212祖父となる父の饒舌新走
季語の良く効いた俳句ですね。新走で饒舌になったお父さんの喜びが読み手にも伝わってきます。


【坂上雲】
特選178
「父」という言葉を使わず、破調でありながら、父がどんな人かが温かく伝わってくる。散文的なのだが、かえって味わい深いような気がして、あえて特選にしてみました。


【大川典巨】
特選:34
恋愛句は佳句が多く、皆さんの意気込みが感じられましたが、とても素直に詠まれた掲句に青春時代の失恋の思いがまざまざと蘇りました。


【北野和良】
特選 158
蓮の花は夜明け前に咲く。咲く時にポンと音がするのだという話もある。作者の初めてのお子さんも夜明け前に生まれたのだと思う。期待を持って待ち構えている時に「お生まれになりましたよ」との知らせがくる。赤ちゃんが蓮の実が飛び出すように生まれたと実感され、自分もいよいよ父親になるのだと感慨を覚える。男なら誰でもが思う瞬間をよくとらえた句です。


【宮野緒幌】
特選 ◎159 父といふ肩巾ありし秋祭
父の背中~などの言い回しは良くありますが、「肩巾」ととらえたところが面白く、また、逞しいお父さんを想像しました。「ありし」と過去形にしていることから、昔、子供の頃秋祭りに連れて行ってもらった、思い出のことだと感じました。 もしかしたら肩車などしてもらっていたのかもしれません。温かい気持ちになりました。


【十河智】
特選 44
恋の始まりなのか、終わりなのか。「秋の海」とは、どうも「終わり」のように思われるのだが、その曖昧さがよかった。


【牧内登志雄】
特選句 34 ひと駅を歩く別れや秋しぐれ
別れがたく「もう一駅」を歩くのか、「この一駅」で最後の別れとしたいのか。そんな別れの時の秋時雨。私を含めて同じような経験をした人も多いのでは。


【俣江美智子】
特選 153
親の背(特に父)を見て子は育つ、の逆手を取るような物言いながら木守柿によって、深いところで繋がる父子の絆を強く印象づけられ、沁々と響きました。


【山野辺草民】
特選202
父の衰えを感じる時、寂しい半面親子の距離がグッと縮まった感じがします。そんな瞬間をよく捉えた句だと感じました。父が存命なら私もこんな句を詠んでみたかった。


【村上ヤチ代】
特選・7
「強制終了」という言葉のインパクトにひかれました。


【遠音】
<特選>178 世渡りが下手で秋刀魚が大好きで
一読して、父への愛が海のようにあふれてくるのを感じました。平易なことばで、リズムカルに、一昔前のような威厳はないかもしれないけれど親しみのある「父」の姿を見事に詠いあげています。お題が「父」であることが示されなければ或いは他の家族や近しい人への思いにも取れるかもしれません。けれど、対象がはっきりしないとしても、このあふれくるあたたかなきらめき、詠み手のふくよかな笑顔がこちらの胸にわき返るような心地よさに、特選に採らせていただきました。


【谷原恵理子】
特選 111番 宅配の天地無用や秋高し
宅配の天地無用という張り紙はよく見る光景です。作者は、平凡なその張り紙から、詩を伴う高い空へ心を飛ばせています。天地無用という潔さが、天高しと響き合い、この言葉を切り取った作者の気持ちが、この句の眼目と思います。スカッとした空がこの句の中にあると思い、もう一つ、野分あと山の匂いの父の墓、とどちらを特選に選ぶか、悩みました。どちらも素晴らしいですが、やはり宅配の天地無用に、斬新で揺るぎない日常への目と、切り取りの大胆な力を感じ、このお句を特選に選びました。


【高尾美紀】
4 恋一つポンと浮かべて月見酒
ポンの音が、いかにも楽しげでとっても好きな句です。そんな風に、月見酒してみたいな~~。


【川岡末好】
<特選=67>この人と生きて行きます秋桜
*「この人と生きて行きます」、作者にとって一世一大の所信表明だと思います。それを詠んだ、これこそ俳句だと思います。そして「秋桜」という季語の措辞。コスモスは強い風に吹かれても意外と風をいなしながら結構健気に立ってます。細い茎ながら意外と芯の強いもの。取り合わせも上手だと思います。内容は確かにありがちなものですが、作者の今の偽らざる心境であるならば全然OKです。詠み口も素直でストレート、俳句はそこから始まるものだと思っております。


【中川洋子】
特選33
よろしくお願い致します


【山田紗由美】
107特選
小鳥来るが未来への期待を彷彿とさせる。


【佐藤日田路】
特選190   その中に父の聲ある芋煮会
今回のテーマのせいか、全体に抒情過多な句が多いように想われました。その中で、作者のさりげなく父を想う気持ちが表現されていて、心地よい。関西在住で、芋煮会の経験はありませんが、バーベキューより季節感があっていいですね。季語が生きています。


【野島正則】
特選9 先生の恋の話や秋茜
学校を卒業して、同窓会で先生と生徒が、恋の話を語り合っているのだろうか。先生も自身の経験をかつての生徒に語り出す。微笑ましい光景と感じた。


【手塚偉智朗】
特選 178 昔、死んだ親父の寂しそうな背中を思い出します。秋刀魚も好きだったなぁ。とても良い御句です。


【津野利行】
特選:47 一度だけただ一度だけ林檎噛む
「ただ一度だけ」というところに、並々ならぬ決意を感じますね。ちょっとアバンチュールを連想させるタッチの句、こういう句好きなんです♪

 

 

いかがでしたでしょうか、私自身もみなさんの読み、コメント、大変勉強になりましたし、楽しかったです。なるほどな~そう読むのか~と、採らなかった句がえらいよく見えてくるのがまた俳句、句会のいいところでもあろうかと思います。特選句以外の選などにつきましては、宜しければブログコメント欄や各自FBページなどにて反省会をしていただければ幸いです。また、次回お会いしましょう、ありがとうございました。

 

俳句大学ネット句会担当/津野利行

第7回ネット句会 講師選発表!

お待たせをしてすいませんでした。第7回ネット句会、俳句大学の講師のみなさんの選句結果をアップさせていただきます。いままでの永田満徳、五島高資、中山宙虫のお三方に加え、今回より渡部稲穂さんを加えた四名の講師のみなさんに選句をして頂きました。

 

★永田満徳選

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【特選】
85 天体図の星から星へ秋の蠅 井伊辰也
「宇宙」という席題は抽象的、想像的になりがちである。しかし、掲句のように、「天体図」に止まり歩く「秋の蝿」を見たまま描いている方が返って、天体の星々を辿る蝿がいるとしたらどうだろうと想像を逞しゅうしてくれる。正しく文字情報のトリックの面白さを堪能させてくれた句である。


【秀逸】
20 長き夜や近くにゐてもゐなくても 川岡末好
50 君おもふゆゑに吾あり酔芙蓉 桑本栄太郎
178 世渡りが下手で秋刀魚が大好きで 関野義高
186 色変へぬ松や岳父の片手酌 恩田富太


【佳作】
36 冬紅葉またねと触れし細き指 檜鼻鬼旬
43 二歩前を歩く君の背赤蜻蛉 中川洋子
100 もう会はぬ人のまなざし天の川 遠音
160 手袋の父の形に残りをり 小酒井あゆみ
164 赤い羽根父の背広に刺ししまま 西村楊子

 


★五島高資選

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【特選】
20 長き夜や近くにゐてもゐなくても 川岡末好
長き夜とは、昼に比べて長くなる秋の夜のことであり、本来は時間的な感覚によるものである。もちろん、誰かを待ちわびるなどといった主観的な時間性も加味される。しかし、掲句では、空間的な距離による詩情を素直に表現することにより、それが却って「長き夜」にうまくフィードバックして、時空を超える恋心あるいは愛情の本質が詩的に捉えられている。


【秀逸】
34 ひと駅を歩く別れや秋しぐれ 渡辺すすむ
85 天体図の星から星へ秋の蠅 井伊辰也
202 秋の蚊を打ち損なひて父笑ふ 遠音

 

【佳作】
96 網膜の底に広がる天の川 高尾美紀
101 銀漢を厠に行きし時仰ぐ 熊谷房子
155 父の忌のまた雪が降るアスファルト 谷原恵理子
162 一度父に叩かれし日よ鷹渡る 俣江美智子
216 老父の足洗ふ音良夜かな 大関博美

 


★中山宙虫選

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【特選】
21 まなうらに栖む鶺鴒の飛び去らず 西村楊子
「恋愛」をテーマに詠まれた句だというのが面白い。鶺鴒の姿が記憶から離れない。尾をくいくいと上げながら歩く鶺鴒の姿が目に焼き付いているのだ。秋の光も感じられる。忘れたいのにちらちらと鶺鴒は離れてくれないのだ。恋愛の句となるとどうしても昭和歌謡の歌詞のような句が多々登場するなか異彩を放っている。


【秀逸】
59 恋絵馬をかたりと鳴らし秋は行く 谷原恵理子
76 満月や天に子宮のあるらしき 西村楊子
120 白秋や火星にありし水の跡 宮野緒幌


【佳作】
34 ひと駅を歩く別れや秋しぐれ 渡辺すすむ
52 眼の合ひてまだ恋未満枇杷の花 山中みきを
160 手袋の父の形に残りをり 小酒井あゆみ
190 その中に父の聲ある芋煮会 渡辺すすむ

 


★渡部稲穂選

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【特選】
120 白秋や火星にありし水の跡 宮野緒幌
白秋は、なんとなくもの寂しい気分の強い季語と火星という近くて遠い存在は、そしてそこには水の跡あるよとの気分が「や」ということばでバランスよくつながっていることに好感をもちました。見えそうで見えない、どちらも心象風景の中にある景色をうまく取り合わせたことから特選とさせていただきます。


【秀逸】
65 微熱ある君の横顔唐楓 野島正則
98 水星の壁から霧の打つメール 小酒井あゆみ
160 手袋の父の形に残りをり 小酒井あゆみ


【佳作】
47 一度だけただ一度だけ林檎噛む 小酒井あゆみ
72 あのひとの雌雄知らんや文化の日 山岸八萬星
175 紫苑挿す月命日に父の部屋 山野辺草民
200 栗飯に徳利一本父の貌 北野和良

 

 

以上です。
講師のみなさん、ありがとうございました!

【管理人:元 俳句大会通信教育学部ネット句会科/津野 利行】